公務員の転職についての知識を共有したいと思います。
まず大前提として、公務員の転職(再就職)には規制があります。
公務員の再就職に規制がある理由は、公務員が民間企業に転職することで日本政府に不利益が生じる可能性があるからです。
たとえばあなたが公務員として仕事をすることで、公務として通常の企業では得られないさまざまな情報を得ることができます。特に公務で関わりのあった営利企業に転職すれば、有益な情報を流して利益を得ることもできますし、簡単に不正をおこなうことができてしまいます。
そうなると公務の情報で特定の企業に利益をもたらしたということで、あなただけではなく、あなたを雇っていた日本政府も批判の対象となります。
国民全員の支払った税金で公務は行われているので、特定の企業に利益をもたらす可能性は排除しなければなりません。
それが公務員の再就職に規制がある理由です。
理解すべき3つの規則
ではその規制を見ていきます。
国家公務員法に規定する再就職等規制は、
1 他の職員・元職員の再就職依頼・情報提供等規制
2 現職職員による利害関係企業等への求職活動規制
3 再就職者(元職員)による元の職場への働きかけ規制
の3つの規制があります。
順番に見ていきましょう。
他の職員・元職員の再就職依頼・情報提供等規制
職員が、営利企業及び営利企業以外の法人(以下「営利企業等」という。)に対し、
他の役職員又は役職員であった者(以下「役職員等」という。)を、当該営利企業等又はその子法人に再就職させることを目的として、
ア) 当該役職員等に関する情報を提供すること
イ) 再就職させようとする地位に関する情報提供を依頼すること
他の役職員等を、当該営利企業等又はその子法人に再就職させるよう要求又は依頼すること
は禁止されています。
これを簡単に言うと、
現職の職員が外の会社に対して、他の職員や元職員の転職を依頼したり転職のための情報を送ったり貰ったりすることは禁止
となります。
更に簡単に言うと①「他の職員の転職の斡旋はしちゃダメ」ってことですね。
難解な用語の説明としては
【営利企業及び営利企業以外の法人(以下「営利企業等」という。)】
国、国際機関、地方公共団体、行政執行. 法人、特定地方独立行政法人を除き、行政執行法人以外の独立行政法人や公益法人等を含む全ての営利企業及び非営利法人を指します。つまり営利非営利問わず、公務ではない仕事をやる法人ということ。
【役職員】
役員と職員(社員)のどちらも指す。法人には役員と職員が分かれているところもあるので、法人に属する全ての人を指したいときに使う用語。役職に就いている偉い職員という意味ではないので注意。
現職職員による利害関係企業等への求職活動規制
職員が利害関係企業等に対し、
離職後に当該利害関係企業等又はその子法人に再就職することを目的として、
ア) 自己に関する情報を提供すること
イ) 再就職しようとする地位に関する情報の提供を依頼すること
再就職することを要求又は約束すること
は禁止されています。
これを簡単に言うと、
現職の職員が自身の公務と関わりがある会社に対して、自身の転職を依頼したり転職のための情報を送ったり貰ったりすることは禁止
となります。
更に簡単に言うと②「公務上関係がある会社に自身の転職活動はしちゃダメ」ってことですね。
難解な用語の説明としては
【利害関係企業等】
職員が職務として携わる事務の相手方のうち、以下のいずれかに該当する営利企業等をいう。
・許認可等を受けて事業を行い、又は行おうとしている営利企業等
・補助金等の交付を受けて交付対象事業を行い、又は行おうとしている営利企業等
・立入検査、監査若しくは監察を受け、又は受けようとしている営利企業等
・不利益処分をする場合の名あて人となるべき営利企業等
・法令の規定に基づく行政指導を現に受けている営利企業等
・国等と一定の契約を締結し、又は契約の申込みをしようとしている営利企業等
・犯罪の捜査、公訴の提起又は刑の執行を受ける者である営利企業等
単なる営利企業等とは違うので注意。
再就職者(元職員)による元の職場への働きかけ規制
離職後に営利企業等の地位に就いている再就職者(元職員)が、離職後2年間、自らが離職前5年間に在職していた局等に現在所属している役職員に対し、当該営利企業等又はその子法人を相手方とする契約又は処分であって離職前5年間(これより以前に課長級以上のポストに就いていた場合は、当該期間を含む。)に担当していた職務(局長級以上のポストに就いていた場合は、在職していた府省等の所掌事務全体)に属するものに関して、職務上の行為をするように又はしないように要求又は依頼することは禁止されています。
なお、在職中に自らが決定した契約又は処分であって当該営利企業等を相手方とするものに関して、在職していた府省等の役職員に対し、職務上の行為をするように又はしないように要求又は依頼することは、期限の定めなく禁止されています。
再就職者(元職員)から違法な働きかけを受けた職員は、再就職等監察官にその旨の届出をしなければなりません。
これを簡単に言うと、
元職員が自身の元居た関係部署に対して、職務に関する行為の要求や依頼は禁止。自身が公務員時代に結んだ契約に関しての要求や依頼は永続禁止。その要求を受けた職員は報告義務。
となります。
更に簡単に言うと③「退職後に関係があった部署に対する職務の口出しはしちゃダメ、口出しされた人は届け出をする」ってことですね。
難解な用語の説明としては
【職務上の行為】
公務員の職務上の行為とは、公務に関する法令または上司の職務上の命令によって定められた行為を指す。
まとめ
以上をまとめると、
・公務員の転職活動には規制がある。
・公務員は特定の法人が得をするようなことはしてはならない。
・公務員の転職に関する規制は以下の3つ
①「他の職員の転職の斡旋はしちゃダメ」
②「公務上関係がある会社に自身の転職活動はしちゃダメ」
③「退職後に関係があった部署に対する職務の口出しはしちゃダメ、口出しされた人は届け出をする」
となります。
規制を理解したら、次はどう自分たちにこの規制の影響が出るかを考えていきましょう。
実はこれまでの話は、これからの話の前振りです。
2017年に文部科学省職員が,さきほど解説した国家公務員法に定める再就職等規制に違反する事案があったのです。
この一連の天下り事件を通して、国民に公務員の再就職の実態が広く知られ、これを受け防衛省も再就職等規制についてしっかりと規定しました。
自衛官の転職に関する規制は、自衛隊法第65条に盛り込まれました。
このために在職中営利企業への再就職が約束された際は、速やかに届ける義務があります。
規制に反した場合は懲戒処分。さらに公務員に関係する立場を利用して実際に不正行為をした場合刑事罰の対象になります。
しかし、転職活動を開始したことを届ける義務は法律上規定されていません。
自衛隊の内部規定で、自衛官が転職活動を始める際、総務に届け出をし、その活動を監視されるのは、私が思うに文部科学省の事案を受けての再発防止策であり、隊員の心情把握、隊をまとめるための必要情報としての理由があると思います。そして職務上必要と上司が判断したものは、部下は従う義務があります。
規制を理解して、正規の手続きを踏んで転職活動をすれば、問題なく転職はできるので、この記事を読まれた方には、ぜひ上司の理解をしっかりととり、正規の手順で転職をしてほしいと思います。